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2010年度県連 「北岳バットレス交流合宿(登攀) 」山行

日 時  2010.9.17(金)〜20(月) ランク   C
地 図    北岳 仙丈ヶ岳(国土地理院1/25000)
   
参加者  S和栄(CL南那須山楽会)、H谷 智(マウントアンサンブル)、A川克正、U木雅人(以上野木山想会)、
 Y木沢昌通(SL)、H瀬範子、Y岡昌徳、S 渉(以上宇都宮HC)
      計8名  
概 要  栃木県勤労者山岳連盟主催の登攀技術の継承を目的とした、北岳バットレス交流合宿(登攀)を実施した。 今回の合宿は、2010年3月の総会にて提案された県連行事として、谷川岳一ノ倉沢南陵での合同登攀訓練等 を経て、実施されたものである。
参考タイム <9月17日(金)>
栃木=桐生大田IC(21:30)=(圏央道)=甲府昭和IC(22:30) =芦安駐車場着(23:50テント泊)
<9月18日(土)>
芦安駐車場(6:00)=(タクシー)=広河原(7:20)・・広河原山荘・・白根御池分岐・・ 白根御池小屋テン場(テント設営、10:15〜11:15)・・・大樺沢二股・・・(バットレス取付部への下見と登攀訓練)・ ・・白根御池小屋テン場(18:00)テント泊
<9月19日(日)>
白根御池小屋テン場(3:00)・・・dガリー大滝手前より二手に別れて取り付く(5:10)
◆dガリー大滝班「@Y岡−S渉組、AA川−U木組」:
 dガリー大滝取付(5:30)・・・4尾根がれ場(7:00)・・・4尾根取付テラス着(9:10)・・・1ピッチ〜8ピッチ(9:40〜14:00)・・・ 最終終了点着(14:30)・・・北岳山頂(16:00)・・・白根御池小屋テン場(18:00)

◆第5尾根支稜班:BS和(CL)−H谷組、CY木沢(SL)−H瀬組
 第5尾根支稜取付(5:30)・・・4尾根がれ場(10:20)・・・4尾根取付(12:00)・・・1ピッチ〜7ピッチ・・・ 最終終了点(19:20)・・・北岳肩の小屋(20:50)・・・白根御池小屋テン場(23:00)


<9月20日(月)>
白根御池小屋テン場(8:00)・・・大樺沢二股・・・・広河原(10:30)=芦安駐車場=(入浴)=栃木

      (凡例 = 車又は交通機関、 ・・・歩行)
投稿者    Y岡M徳  H瀬範子

  【概 要】

 9月17日(金) :栃木〜芦安駐車場
9月17日 午後から出発。足利で最終的に集合しワゴン車台にて、北岳の玄関口である芦安 に向かう。芦安駐車場にてテント泊。


 9月18日(土)
 :芦安駐車場〜広河原〜広河原山荘〜白根御池小屋テン場・・・ (バットレス取付部への下見と登攀訓練)・・・白根御池小屋テン場(テント泊)

5時起床、6時にワゴンタクシーにて広河原へ向かう。
 広河原山荘で登山届を出して、尾根コースにて白根御池小屋に向かう。テント泊用・登攀用の装備が入った ザックは重い。喘ぎながら一歩一歩ゆっくり登る。それでも、白根御池小屋には10時過ぎに到着する。  テントを設営し昼食を済ませ、明日の下見に出発(11時過ぎ)する。

 <下見、登攀訓練>
●コース:白根御池小屋・・・大樺沢二股・・・左股・・・dガリー大滝・・・(登攀訓練dガリー大滝)
 大樺沢左股を登って行くと右側に北岳バットレスの岩壁が見えてくる。左側に見える鋭いピークのある岩壁が ピラミッドフェースで、明日登攀予定の4尾根の下部岩壁である。
 我々は、大樺沢左股から右側のC沢沿いにdガリー目指して登っていく。途中ピラミッドフェースを見上げると 登攀中のパーティを発見。また、後から登ってくるパーティもある。
dガリー大滝下部に到着し、早速、登攀具をつけて登攀訓練を行う。dガリー大滝の1ピッチ目取付のフェースが なかなか手強い、手と足のホールドが小さく体を引き上げるのに苦労した。


4パーティ共1ピッチの登攀訓練を終えて、白根御池小屋テン場に着いたのは18時。正直疲れた!明日に備えて、 食事後すぐ就寝。
                          *写真をクリックすると大きくなります。
  

白根御池小屋に到着

小屋前に2張りのテントを設置

下見、登攀訓練へ準備中
  

大樺沢二股から左股(八本歯のコルへ)を登る

右側に北岳バットレスの岩壁が見えてくる。左の鋭いピークのある岩壁の上部が4尾根、下部が ピラミッドフェース

ここから沢沿いにdガリー大滝を目指して登っていく
  

 9/19(日) 白根御池テント場〜dガリー大滝及び5尾根支稜登攀〜4尾根テラス〜4尾根登攀〜終了地点〜北岳山頂〜テント場へ戻り

 いよいよ本番。満天の星空。条件的には申し分がなさそうである。予定通り、3時丁度に、真っ暗の中を出発する。 昨日の下見で迷うことなく順調だ。dガリー大滝が見える頃には、明るくなっていた。  ここで、dガリー大滝班と5尾根支稜班に分かれる。



  北岳バットレス第4尾根登攀記録 宇都宮HC Y岡M徳 

◆アプローチ

 我々dガリー大滝班は、待ち時間なしですぐに登攀を開始した。1組目が、Y岡・S(敬称略)。 2組目がA川・U木。昨日の訓練の成果なのか順調に登攀し、4尾根がれ場には7時頃到着した。CLが遅れていて 我々自身の判断で前に進むべきか悩んだが、Sさんが昨日の訓練時にCLからルートに関する情報を聞いていたので、 その情報に基づき、バンドを右にトラバースすることにした。Sさんが記憶していたCLのルート情報は正確で、 4尾根取付テラスには、9時過ぎには到着した。
◆登攀
 既に5名の先行パーティーがとりついていた。我々は2番手であった。私とSさんは朝食を摂る(この後登攀終了点まで 飲食出来ず)為、A川、U木組に先に登ってもらうことにした。待ち時間の間にも続々と後続パーティが到着し テラスは満員となる。
 いよいよ、我々の番だ、私がジャンケンで1ピッチ目のリードとなり、登攀を開始するが、 5尾根支稜班の姿はまだ見えない。我々は2番手のはずだったが、テラスの脇から取り付いたツアー客たちに 割り込まれて、支点がふさがっている為やむなく岩角にスリングを掛けて1ピッチ終了点の支点にする。
 2ピッチ目は二本のルートがあり、Sさんは左ルートをとるが、前がふさがっている為手前でかなり待たされる。 3ピッチ目白い岩のフェースで快適な登攀だったが、前が詰まっていて手前でビレイ支点をつくる。 先行したA川、U木組からどんどん離されてしまう。

 核心部といわれる5ピッチ目の出だしは、滑りそうな垂壁である。こまかいホールドに立ちこみながら、 右側に廻り込んでいくとガバを掴むことができクリヤー、ナイフリッジを越えてマッチ箱にでる。 マッチ箱の頭からの眺めは高度感もあり素晴らしい。Sさんが登ってきて懸垂降下の準備を開始するが、 Sさんのロープワークは見ていてもスムーズで安定感がある。
 マッチ箱から懸垂降下して10m下のテラスに降りると、次の6ピッチ目はSさんがリード、コーナークラックからフェース への迂回ルートはロープの流れが悪いようで、枯れ木のコルへの中間地点でピッチを切る。
 7ピッチ目は私のリード、 枯れ木のコルまでは、リッジ(尾根状の岩)沿いに行くか、左に降りてルンゼ(岩溝)を行くか迷うが、リッジを直登することにした。 途中、ハンガーにスリングが掛かっていて、リッジが切れて飛び越す箇所があり、今回の登攀で初めてスリングを 掴んで(A0)しまった。後で聞いたところ、飛び越して左に登ると安定したホールドがあったとのこと。

 枯れ木のコルには支点が1箇所しかなく、長い順番待ちを強いられる。8ピッチ目は20m程で登攀終了点がある。 Sさんがリードでスタートするが、なかなかビレイ解除、登ってこいのコールがかからない。 前のパーティーが支点を使用していて空かないので、Sさんがピトンを打ち込み暫定支点づくりをしていたとの事。 Sさんからのコールがあり、登攀終了点の広いテラスに到着。Sさんと握手して、すぐに大きな亀裂を飛びこし、 そのままスラブを登って終了点の靴脱ぎ場へ出る。靴脱ぎ場では、先行したA川さん、U木さんが出迎えてくれた。 (14:30)

                          *写真をクリックすると大きくなります。
dガリー大滝取付き 四尾根取付きテラスにて 四尾根取付きテラスにて

  ◆登攀終了後
 終了点の靴脱ぎ場で、水の補給と遅い昼食を摂る。後続パーティが到着するが、5尾根支稜班2組の 姿は見えない。Sさんが、CLに無線でコールするが応答がない。はぐれた場合のCLからの指示は、 「先にテン場に戻って、夕食の準備をしておくこと」だったので、dガリー大滝班4名はテン場に戻ること になった。
 途中、北岳山頂にて、、CLに無線がつながり、S和(CL)−H谷組は、終了点の靴脱ぎ場に到着 したとのこと。CLからの指示は、「自分たち2人は、後続のY木沢(SL)−H瀬組をここで待つので、 dガリー大滝班4名は予定通りテン場に戻り、すぐ食べれるように夕食の準備をたのむ」であった。

 dガリー大滝班4名がテン場に到着したのは午後6時であった。CLからコールがあり、「Y木沢(SL)−H瀬組 の声が聞こえた、終了点近くにきているようだ」との連絡があった。  食事の準備が終わった頃に、CLからコールがあり、「終了点の靴脱ぎ場に着くのは、午後8時頃に、 テン場に着くのは、午後11時頃になる」との連絡があった。
 結果的に、5尾根支稜班4人がテン場に着いたのは、午後11時であった。遅い夕食を摂り、反省会もそこそこに 就寝。本当に疲労困ぱいした・・・充実感でいっぱいの・・・ながーい一日であった。  
                          *写真をクリックすると大きくなります。
  

四尾根終了地点にて(dガリー大滝班)

北岳山頂にて(dガリー大滝班)

午後11時テン場到着(5尾根支稜班)
 

北岳バットレス第4尾根登攀を終えて 宇都宮HC H瀬範子 

◆アプローチ

 2010年9月19日午前3時、星空の下、白根御池の幕営地を出発する。所狭しと張られたテントの数からして、すでに本日 の岩場の込み具合が予想されるものでした。
 今回のメンバー編成は、2人一組の4チームで私はSLと組むことになりました。 私としてはたいへん心強い思いでしたが、相方にとっては逆の思いだったのではないかと申し訳なく思いました。 午前5時過ぎに第5尾根支稜下部に着いたのは、CLのチームと我々の2組でした。 他の2組は、前日の下見で試したdガリー大滝下部から取り付いたようでした。

 先着に2パーティーがいて登っていきましたが、支度を済ませても我々の順番はなかなか回って来ず、しびれを切らせて 上ってみると、尾根の横から取り付いたツアー客たちにテラスがどんどん占領されている状態でした。 順番が来て次に行こうとしたら、ツアーのガイドさんに無理矢理割り込みされてしまい、またしても待つことになりました。
 さて、気を取り直してアプローチ再開、ロープを伸ばしていくが、dガリー、cガリー、その間のトラバースと、 人が動く度に「ラーク、ラーク」の声が上がり、4尾根の取り付きに着くまで、ひたすら落石の恐怖を味わうことと なりました。
あちこちで順番待ちし、結局4尾根取り付きに着いたのは11時でした。

◆登攀
 我がパーティーのCL組が登攀中で、5時間ぶり位に会えたことになりますが、2チームの間にはあちこちからアプローチ してきた数パーティーが順番待ちしていて、またしても離れ離れになっていきました。我がパーティーの他の2組は先行 していて一度も会うことはありませんでした。
 12時。鳳凰三山や富士山を眺めたり、他のパーティーとのお喋りも口数少なくなってきた頃に我々の番が来て、 いよいよです。私は難易度の低い偶数ピッチのリードをお願いしたのですが、1ピッチ目の凹角はセカンドながら 厳しかったです〜。(体も硬くなってきていたし…というのは言い訳ですが)
 3ピッチ目、白岩のフェース手前で1時間ほど待機している間に空は曇り体が冷えてきて、ホッカイロ、セーター、 雨具の上着を着、ヘッドランプの用意をする。ここまでのあまりの待ち時間と先の様子が見えないことから、ビバークの ことも考えるようになる。
 すぐ前のパーティーの人がこれから先の時間に不安を抱きだしたらしく、核心部に行く前にここから引き返したほうが 良いのではないか等といろいろと話しかけてくるが、相方のSLは、先で必ずCLが待っているはずだからと進むことに。 結局前のパーティーも前進することにしたらしい。引き返すのもたいへんだったと思います。
 4尾根核心部と言われる5ピッチ目の下部コル、ここでも待つ。待っている間に、前方の枯れ木のコルの辺りから SLの名前を呼ぶCLの声が聞こえる。手を振っているその姿も見え、大いに勇気付けられる思いでした。
 16時40分登攀再開、核心部もリードの細やかなランニングの取り方といざとなったら何でもありとで、 ヒョイと上部に出られた。後続隊もいることだしスムーズにいってよかったぁと思う間もなく、そこからの 馬の背リッジは空に浮いているようにマッチ箱まで続き、私は馬乗りのような格好で進んだのではないでしょうか。 よく覚えていません。ギアの回収はしっかりやりましたが…
 マッチ箱から懸垂下降(スリル有り)して、崩壊して狭くなってしまったという旧マッチ箱のコルへ下りる。 そこからの6ピッチ目、ここが私にとって最大の難所となりました。  コース取りがよくなかったのか、(一旦下のテラスに下りようかなぁ)と考えましたが、下の相方からアドバイスを もらったりして何とかクリア。このクリアは嬉しかったです。
 もう大分薄暗くなっていて、すぐに相方が7ピッチ目フェース上部へと登るが、枯れ木のコルへの途中で順番待ちとなり、 それぞれ別々の狭いテラスで待機している内にとっぷりと日が暮れ、真っ暗になっていきました。ここでヘッドランプに スイッチを入れる。
 心細さとかを感じる余裕もないのか、恐怖心はなく、待っている間に来し方を振り返ると、後続のパーティーが マッチ箱から懸垂下降していました。雲が切れ、満月に近い月が煌々とそのシルエットを浮かび上がらせています。 3000メートルの空に浮かぶ黒いシルエットと蒼い月、この一枚の絵は生涯忘れないことと思います。
 そして、そこからは真っ黒の岩をヘッドランプで照らしながらの登攀となりました。 私が登っているすぐ後ろを次の人が追いかけるように登ってきました。 暗いし、手がかりを捜すのに頭をぐるぐる回さなくちゃならないし、滑る岩だし、後ろは追っかけて来るしで、 ここも怖かったぁー。
 8ピッチ目は私のリード。左から枯れ木のテラスへ、そしてそこから右側へ出た途端、上方からCLの声が聞こえてきた。 SLの名前を呼んでいるのに、「はーい」と返事をしてしまった。「こんな所で待っていてくれたんだぁ」と感無量。 暗い中、岩がぱっくりと割れている所もあったが、そこから先は上方の声の誘導でルートも見つけやすく、 相方も後続のパーティーにルートを教えながら登ってきて、終了点で無事CLチームと合流、4人で強い握手をしたのが 19時20分でした。


  ◆登攀終了後
 「まずはロープをはずして、飲んで、食べて」とのCLの言葉に甘えて、ほとんど何も摂らずにきていたので、飲んで食べて ほっと息をついていると、はずしたロープをCLとそのパートナーが捌いてくれていました。有難かったです。
 登山靴に履き替えて、19時40分に歩き出す。風が冷たい北岳頂上を過ぎ、肩の小屋で一休みして、草すべりのきつい 下り坂を頑張り、白根御池の幕営地に着いたのが23時、明け方出発してから20時間が経っていました。
 寝静まったテント群の中にぼんやりと明るいテントが二つ、先着の4人の仲間が寝ずに待っていてくれたのです。 片づけを済ませ、テントの中で仲間が作ってくれていた暖かい夕食(美味!)を頂きながら、途中割り込んで来た プロガイドさん、途中待ち時間が長くて不安になり引き返しそうになっていた前のパーティー等、思い出していました。
 それぞれの人がいてそれぞれの事情があるのだろうなぁと思いつつ、私達が必ず登ってくると何時間も待っていてくれた CLとそのパートナー、必ず待っていてくれると信じて登ったSL、それをサポートしてくれた仲間たち、そんな人たちに 支えられて、私の山は更に素晴らしい山になった気がします。

 素晴らしい山も、要となるCLの力、CLとSLの信頼関係、頼りになる仲間達がいてくれることで、更なる感動をもらえる と実感しました。
S和栄CLに、Y木沢昌通SLを始め仲間の皆さんに、そして微力な私がそこに居られたことに、全てのことに 今、感謝の思いでいっぱいです。
                                 H瀬範子                                 

 9/20(月)
 白根御池小屋テン場(8:00)・・・大樺沢二股・・・・広河原(10:30)=芦安駐車場=(入浴)=栃木


                          *写真をクリックすると大きくなります。 
  

白根御池小屋テン場にて

北岳バットレス頂上直下やや左側顕著な岩稜が第四尾根

大樺沢を下山途中に北岳バットレスを振り返る
 
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